2017年12月8日金曜日

2015.05.31 「ピースナイン」編集を降りて
                                         (「湧水」)


  久万高原9条の会機関紙「ピースナイン久万高原」の編集を約8年94号をもって降りた。脳出血を発症したことを機会に、後続の方による継承発展を期待してのことである。A4判縦使い縦書き5段構成裏表2ページを毎月9日付けで発行してきた。発行日が近づくと一種の緊張感に襲われ、張り合いを持つとともにしんどい思いも併せ持って迎えた。
  新聞は、見出し、リード、本文、資料(データ・写真・談話等)で構成され、本文は重要なものから先に書き、5W1Hの事実を明確に記すものになっている。視覚的にはレイアウトがカギを握る。
  憲法9条をめぐる問題は政治の次元の問題であり、日常の暮らしとどう関わらせてゆくか、紙面構成に一番悩み抜いたことである。卑近な例だけを記すのではなく、普通なかなか入手できない情報を提供することによって、そういうこともあったのか、そうだったのか、そういう考え方もできるのか、といった思考の場を作り、議論に参加していただけたらと思って、多少レベルの高い切り口にすることが多かった。最近、安倍内閣による、平和も民主主義も生活も破壊する、狂気に近い行政が猛進しているのに、国民の支持率が高いという民主主義の未熟さ(同調圧力から自立できない個人)に希望を失いそうになったが、それだけにこの新聞を出す意味があると思い直したりして続けてきた。
  長野県南部に中川村という小さな村がある。曽我逸郎村長は現在3期目。「憲法9条を守る首長の会」、「日本で最も美しい村」連合加盟、「中川村全村挙げてTPP交渉参加反対デモ」呼びかけ隊列の先頭に、「脱原発を目指す首長会議」参加、「国旗に一礼しない村長」。曽我逸郎さん自身がすごいのはもちろん、この人を3期も首長に選んだ村民にも敬意を表したい。
  中川村議会一般質問。「村長は卒業式や入学式で国旗に一礼していないようだが、なぜか。」
 曽我村長答弁。「国を誇りに思う気持ちは、誇れる国を創れば自然に生まれる。そのためには一人ひとりがあるべき国の姿を考え、その実現に向けて行動しなければならない。国旗への一礼を押しつける空気は、思考や行動を型に嵌め萎縮させる。誇れる国にすることを妨げる。かえって日本の足を引っ張る。強制の空気のあるうちは一礼を控えたい。」  (12年6月)
村立中川中学校卒業式祝辞
  (前略)若い皆さんはこれからの社会を築いていく立場にあります。私たち大人の失敗を改めてもらわねばなりません。経済においても、またエネルギーなど社会の基本的仕組みにおいても、これまでの延長線上ではやっていけない時代になっています。みなさんの若々しい自由で柔軟な発想が必要です。そのためには、どうか皆さん、幅広い勉強を続けてください。そして、まわりの空気を恐れず、勇気をもって自分の考えを表明し、批判を受け止め、みんなでお互いに考えを深めていくことが大切です。人と違う意見は、違うというだけで価値があります。少数意見にも耳を傾け、互いに学び合って、明るい未来、希望の持てる社会を創り上げていただきたいと願います。
  最後に英語の言葉をはなむけとして送ります。
   You can't control the length of your life
  but you can control the width and depth
  (人生の長さを好きに伸ばすことはできないが、
   人生の広さと深さは自分で広くも深くもできる。) (後略)
                     (11年3月16日)
 国旗一礼の答弁も中学校卒業式の祝辞も若い世代だけでなく、私たち大人自身が重大な考慮を払うべき問題である。これこそが日本に根付かなかった最大の課題だとも言える。私は、冒頭に書いた発症から人生の長さが残り少なったことを強く感じるようになった。終末を迎えるまでにしておかなければならないことがたくさん残っている。限られた時間、少しでも広さと深さのある人生としたい。「ピースナイン」の編者は降りたが、人生の現役は降りない。希望がないように見える現今の日本と世界、ギブアップして何もしないのでは、相手の思うつぼにはまるだけだからだ。
  (参考文献 曽我逸郎著「国旗、国歌、日本を考える」トランスビュー発行)

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